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年金 繰上げ vs 繰下げ — 60〜75 歳 最適受給開始年齢の決め方
老齢厚生年金・老齢基礎年金は 60〜75 歳の好きな年齢で受給開始できます。繰り上げると最大▲24%・繰り下げると最大+84%。長寿リスクに対する保険として、戦略を数値で整理します。
最終更新 2026-05-20解説 / 年金約6分で読めます
繰上げ・繰下げの減額・増額
| 開始年齢 | 月額変動 | 月額(基準 15 万) | 65 歳との損益分岐 |
|---|---|---|---|
| 60 歳(繰上げ最大) | ▲24% | ¥114,000 | 80 歳 |
| 63 歳 | ▲9.6% | ¥135,600 | 79 歳 |
| 65 歳(標準) | 0% | ¥150,000 | — |
| 68 歳 | +25.2% | ¥187,800 | 80.9 歳 |
| 70 歳(推奨) | +42% | ¥213,000 | 81.9 歳 |
| 75 歳(繰下げ最大) | +84% | ¥276,000 | 86 歳 |
※ 繰上げは月 0.4% × 繰上月数、繰下げは月 0.7% × 繰下月数。それぞれ最大 60 ヶ月 / 120 ヶ月で計算。
損益分岐年齢 — 「いつまで生きるか」で決まる
繰上げ / 繰下げの判断は本質的に「自分の予想寿命」と「将来の年金財政」のトレードオフです。寿命統計から考えると:
- 男性の平均寿命: 81.5 歳(2026 年厚労省データ)
- 女性の平均寿命: 87.5 歳
- 65 歳到達者の平均余命: 男性 + 19.5 年 = 84.5 歳、女性 + 24.3 年 = 89.3 歳
つまり 65 歳まで健康に到達できた男性なら平均 84.5 歳まで生きる ため、70 歳繰下げ (損益分岐 81.9 歳) は統計上有利。女性はさらに長寿なので 70〜72 歳繰下げが王道。
ケース別 最適戦略
A. 健康・新NISA + 退職金で 4,000 万円超
→ 70 歳まで繰下げ(+42%)。65〜70 歳の生活費は貯蓄で賄える。長寿リスクへの最強保険。
B. 健康・貯蓄 2,000〜3,000 万円
→ 65 歳標準受給。貯蓄が薄いので繰下げは無理。働きながらの繰上げは在職停止のリスクで非推奨。
C. 健康不安あり(持病・ガン家系・喫煙者)
→ 60〜64 歳の繰上げ。78 歳までしか生きないと見るなら繰上げ有利。年金額の減少を月の支出で吸収できる範囲で。
D. 配偶者と共働き・どちらも厚生年金
→ 夫婦で時期をずらすのが最適。夫 60 歳から短期生活費、妻 70 歳から増額後の生活費、というように世帯収入を時期分散。
E. 70 歳以降も働く予定
→ 在職老齢年金の支給停止(月 50 万超で半額停止)が発動するため、働く間は繰下げ、リタイア時に受給開始がベスト。
陥りやすい誤解
- 「繰下げると年金財政が破綻して受け取れない」→ 誤解: 受給開始した年金は財政的に確定。受給中の額が減ることは現行制度上ありません。
- 「繰上げで早く受け取った方が得」→ ケースバイケース: 健康な人は損するパターンが大半。80 歳以降の生活が薄くなる。
- 「夫婦で同じ受給開始がベスト」→ 非効率: 時期分散の方が世帯収入が安定。妻の方を繰下げて長期保障に。
- 「繰下げ中に死亡するリスクで損」→ 限定的: 未支給年金は遺族が受け取り可能。完全に「掛け捨て」になるわけではない。
よくある質問
- Q. 繰下げで「84%増額」って本当?
- 本当です。65 歳から 75 歳まで 10 年繰り下げると、月の年金が 84% 増額。例: 65 歳開始で月 15 万円なら、75 歳開始で月 27.6 万円に。寿命まで増額された月額が続くので、長寿リスクのヘッジに最適。
- Q. 繰上げの「24% 減額」は損?
- 60 歳から開始で「月額▲24%」のまま生涯続きます。健康状態が悪く 78 歳までしか生きないと予想する場合や、貯蓄がなく今すぐ生活費が必要な場合は合理的選択。65 歳開始と比較した損益分岐は約 80 歳。
- Q. 受給を遅らせている期間の生活費は?
- 貯蓄・退職金・新NISA からの取り崩しで賄います。退職金 2,000 万円 + 新NISA 2,000 万円があれば、65〜70 歳の 5 年間 (月 30 万生活費 × 60 ヶ月 = 1,800 万円) を貯蓄で賄って、70 歳から増額年金を受給する戦略が王道。
- Q. 年金繰下げ中に死亡したら?
- 原則として「未支給年金」(死亡時点まで受け取らなかった分) は遺族が受け取れます。ただし繰下げで増額した分は適用されず、本来の 65 歳開始時の額で計算。長寿の見込みが立たないなら繰下げのリスク。
- Q. 在職老齢年金との関係は?
- 65 歳以降も働いて月収 + 年金 ≥ 50 万円だと、超過分の半分が支給停止 (2026 年現在の基準)。繰下げ中はこの停止が「停止前の額」基準で計算されるため、働きながら繰下げると不利になる場合あり。完全リタイア前提なら繰下げが有利。